こめかみと、右足のひざにはガーゼが一つずつ貼ってある。痛めた手首にはシップと包帯がグルグル巻きで、他に出来た小さな傷はあまり目立たない絆創膏で補っている。

「………」

こうやって自分の姿を見てみると、ついさっきの事がどれだけ酷かったのかと言う事をつい考えさせられてしまう。その度に背筋が震えて胸がズキズキと痛んで苦しくなる。


「心ちゃん、家まで送るよ」

「え、いや。でも、」

「ここまで来てバイバイだなんて無責任すぎるでしょ?」

「………」

「このまま帰らすのも心配だから、送らせてくれないかな」

「……えっと、じゃあ…、お願いします」

「うん。じゃあ帰ろうか」


その後、久瀬先輩に家まで送ってもらい、久瀬先輩とは家の前で手を振って別れることとなった。

「久瀬先輩、今日は本当にありがとうございました」

「いや、良いよ良いよ。早く治ると良いね」

「…はい」

その日の夜は仕事から帰って来たお母さんに当然の如く「どうしたのっ?」って問いかけられて、あたしはそれに「学校で派手なこけ方したの」ってそんな最もらしい嘘を付いてお母さんを誤魔化した。
部屋にこもると当然のように体が震えて、今日の事を思い出す度に涙が出て来そうになる。

体と心が痛くて苦しくて、これからあたしはどうすればいいのか、自分自身とうとう分からなくなって来てしまっていた。