「利用すんのよ!…矢沢君を使って、先輩の気を引くの」
「え、はっ?何言ってんの!?そんなの無理だよ。……矢沢君、凄く怖いし。先輩は、あたしなんか眼中にないし…」
「大丈夫だと思うんだけどなあ。だって矢沢君、心の好きな人知らないんでしょ?」
「……いや、知ってるよ」
「え」
「調べたんだって。ホント最低だよね」
「ああ。なら無理だね。矢沢君の逆鱗に触れるかも」
「……そんな事になったら、あたしもう此処に居ないよ」
あたしがしょんぼりと眉を下げながらそう言うと、目の前の由希は何が面白かったのかいきなり「ははは!」と声に出して笑いだした。
「な、何で笑うの!?」
「ごめんごめん。まあ何かあったら言って来てよ。いつでも協力するからさ」
「…うん、ありがとう、由希」
「良いって。こういう時こそ友達に頼らないで誰に頼るのよ」
出会った頃から本当に由希は心強くて頼もしい。由希が男の人だったら完璧惚れてるだろうなって思ってしまうくらいには物凄く勇ましい女だと思う。

