「こころっ、こころ!」
「あ、由希」
次の日、休みたい気持ちを何とか抑えつつも学校へ来たあたしに、高校に入ってから初めて仲良くなった友達、相沢 由希(アイザワ ユキ)が、大声を出してあたしに話掛けて来た。
「どうしたの?」
「どうしたのじゃないよ!昨日の何!?」
「え。あ…」
由希にそう言われ、あたしは昨日の放課後、矢沢君に突然呼び出された出来事を思い出す。
「…大丈夫だった?変な事されなかった?」
「え、うん。全然大丈夫だよ」
あたしを心配したような目でそう言って来る由希に、あたしは心配させたくない一心で笑顔で平気だと返した。本当は、全然平気なんかじゃないんだけれども。
「で、昨日の矢沢君何だったの?心に用があるなんて…」
「あ、うん…。ホント予想外だよね…」
「矢沢君に何か言われた?酷い事言われなかった?」
「いや、酷いっていうか、違う意味で最悪って言うか…」
「え?何?」
「………えっと、私は全くその気ないんだけど、矢沢君と、付き合う事になって…」
「………えっ」
居た堪れなさを感じながらそう告げると由希はこれでもかと言うくらい驚いた顔をする。無理もないだろう。
「…………」
「ホント…?」
「うん……。もちろん、あたしは嫌なんだけど…」
「え、でも心好きな人居るじゃん!諦めるの?」
「えっ?諦めないよ!矢沢君が居ようが、あたしには先輩だけ。先輩しか好きじゃないよ」
「そっか。そうだよね。何かそれ聞いて安心した」
「うん。まあ、先輩の事は見てる事しか出来ないし、一生片想いだけどさ」
「そんな悲しい事言わないの。この際逆手に取ってやんのよ」
「え?」
そう言った由希にあたしが首をかしげると、目の前の由希はいきなり可愛い顔をして凄い事を言い出した。

