「いや、あの。ちょっと先帰らないといけなくて」
「ふーん。急いでたのに寝てたのか」
「あ。いや。それは……」
「……まあいい。お前、今時間あるか」
「えっ」
「山本駅の近くにある公園に居るから、今すぐ来い」
「え。何で…」
「良いから」
「………わ、分かった」
本当は行きたくなかったけれど、今は学校に居る訳でもないし家の近くなら大丈夫かな…なんて思いつつ、あたしはラフな格好に着替えて山本駅の近くにある公園まで自転車を颯爽と走らせた。
それから数分も経たない間に目的地へと到着して、こっちにゆっくりと振り返った矢沢君が「遅ぇよ」と低い声でそれだけ返して来た。
「こ、これでも急いだ方だよ」
「ふーん」
矢沢君が座っているベンチの隣にあたしもストンと腰を下ろすと、矢沢君は不意にこっちへそっと視線を向けてきた。

