上履きに入った押しピンを全部奇麗に取り除いてからトボトボとした歩調でクラスへ向かうと、またしても痛々しい視線があたしに向けられた。


「心、おはよ」

「あ、由希。おはよう。今日早いね」

「うん、朝練早く終わってさ」

「そうなんだ」

教室に入るとすぐ、友達の由希が声を掛けてきてくれて、あたしはそれに少しだけ気が軽くなるのを感じた。周りは悪い方向に傾いて来ているというのに、由希だけは変わらないでいてくれて、ずっとあたしの味方で居てくれる由希が物凄く心強かった。


そんな事を思っていると、またわざとらしい悪口が耳に入ってくる。

「別に学校来てくれなくても良かったのに」

「シンに会いに来たのかよ」

「もうホント邪魔だよね」

嫌で嫌で仕方がない鋭い言葉達はグサリとあたしの心臓を突き刺してきて、止まることを知らない。

「……ほんと論外だよね。身分わきまえろって話」

「シンもシンだよ。何であれなの」

「もっとシンに相応しい相手なら分かるけどー。東雲さんはねぇ…」

「もうマジ有り得ないし。超ムカつく」


言葉の一つ一つが辛くて、バっと手で耳を塞ぎたくなる。ズキズキと痛み続ける胸を、あたしはひたすらグッと抑え込んだ。