これが、あたしの彼氏です。【完】



あたしがそう言うと、蒼稀君は初めましての挨拶!と言って、勢い良くあたしに右手を差し出して来た。

「え、あ…うん…」

あたしは動揺しながらも、差し出された右手にそっと左手を差し出してぎこちない握手を交わす。


「お前、手ぇ冷たいんだなー」

「えっ」

そう言って繋がれた手をブンブンと振る蒼稀君に矢沢君は何を思ったのか、不意にバシッとあたしと蒼稀君の手を無理やり振り解いてきた。


「手ぇ出すなよ、蒼稀」

「出さねぇよ」

軽く眉間に皺を寄せた矢沢君がそう言うと、蒼稀君は拗ねたようにちょこっと唇を尖がらせた。



その後、夕方くらいにゲームセンターを後にすると、意外にも矢沢君がいつも降りてる駅まで送ってくれた。

「あ、えっと。ありがとう…」

「ああ」

一応送ってくれたわけだし、ありがとうくらいは言っておいた方が身の為だと思い小声で小さく告げる。

「じゃあ気を付けて帰れ。また明日な」

「…あ、……うん」


矢沢君はそれだけ言うと来た道を戻っていき、あっという間に見えなくなった。あたしは矢沢君が放った「また明日」って言葉に身が重くなるのを感じながらトボトボと帰路についたのだった。