「ねぇ、矢沢君」

「あ?」

「何だかんだ言って、今日楽しかったね」

「あ?……あぁ」

相変わらず素っ気ない返事を返す矢沢君は、それだけを零して不意に黙り込んでしまう。そんな矢沢君に、また少しだけ笑みが零れる。


最初は矢沢君と夏祭りだなんて来たくなかったのに、いつのまにか一緒に楽しんでいる自分に気が付いて内心少し戸惑ってしまったけれど、久々に豪華な花火も見れたわけだし今日は来て良かったなあと正直にそう思った。


そんならしくない事を考えつつ、心の中で今日の一日を振り返っていると――――、






――――――パシャ。





――――不意に何処からか、カメラのシャッターを切ったような音が、あたしの耳に小さく響いた気がした。