「わんっ!」
プリンを振り切り、由紀の足をかじると
「どうしたの?マルちゃん」って言ってくれるけど、なんつーか心がないぞ。
「太平さん、お昼とかどうします?私……お弁当を作ってきたんですけど……」
「お昼は考えてませんでした。森崎さんの手作りですか?」
「はい、でも、そんな……あの、美味しいかどうかは……」
「手作り料理なんて久し振りです。いつも外食かコンビニばかりで、お弁当食べたいけど、いいんですか?」
「天気もいいし。外で一緒に食べたら美味しいと思います」
何だよこの感じ。
由紀ー。俺を見てよー。
こんなにキュートな俺を見てよー。
一生懸命引っ張ると
「あぁそっか、ごめんマルちゃん」
由紀は思い出したように大きな布のカバンから、フリスビーを取り出した。
「はいっ!マルちゃん行けーっ!」
そんな声と
一直線に飛んでゆくフリスビーに意識が夢中になり
ハッ!と自分に気合を入れて
俺は猛ダッシュで走り出す。
「しょせん犬よね」
色気のあるプリンの声を背にして
緑の芝生を肉球で感じ
風に乗り茶色い巻き毛をフワフワさせて
これから始まる
色んな予感を追い払うように
俺は思いきり
まっすぐ走り出す。
【完】



