マルカポーネの心配事

「もう帰れるよ。少しゆっくり過ごそう。ドッグランは来週行こうか」
由紀は俺を抱き上げ顔をよせる。

せっかく
これからって時に。
残念に思っていると、由紀の後ろから大きな影が現れた。

「近くにドッグランあります?」

細身だけど身長は高い。
リンゴ何個分だろう。

男も「プリンも帰ろう」と、優しい声でポメラニアンを抱く。

「車で20分ぐらいかかりますが、いい場所ありますよ。広くて一緒に入れるカフェもあるし、うちのマルちゃんも常連です」
由紀が答えると「それはいいですね」って男はポメラニアンに微笑む。

プリンっていうのか
いい名前じゃん。
甘党の半蔵が好きそうな名前だ。

「引っ越してきたばかりでよくわからなくて、よければ場所を教えてもらえます?」

「いいですよ」

由紀は俺を診察台の上に置き
男もポメラニアンを俺の隣に置き

紙とボールペンを出して色々と話をしながら何か書いてる。

「いい感じじゃない?」
俺の隣で彼女がさりげなく身体を寄せながら俺に言う。

メスの匂いって、いいもんだ。

「由紀は男はコリゴリなんだ。変なヤツばかりに引っ掛かる」

飼い主たちの後ろ姿を見ながら
俺達はケツの匂いを嗅ぎ合う。

「うちのヨシ君も女運悪いよ。優しくて真面目なのに、高飛車でワガママな女ばっかり寄ってくる」

「うちの由紀もいい女なんだけどねー」

「ヨシ君だって、眼鏡男子で顔も涼しげでいいんだけど……なんだろーねー」

クンクンとメスの香りを嗅ぎながら

俺の由紀も隣に立つ男も
騙されやすい香りをあちこちに振り舞いて
変な相手に引っ掛かるんだろうか

そう

思ってしまった。