マルカポーネの心配事



目覚めると

俺は人間になってい……たらいいんだけど。
あいかわらずキュートな犬のままだった。

「くぅ~ん」
情けない声を出し
小さなタオル枕の上でぼんやりしてると

「マルちゃん」
俺の目線に合わせて由紀がゆっくり顔を覗く。

「もう大丈夫だよ。すぐ帰れるからね」
そう言いながら号泣。

壁ドン状態から。俺、生きてた?
おぉラッキー!
身体を動かそうとして「まだ動かないで」って由紀に言われた。

調子はイマイチだけど
なんつーか大丈夫そう。

「軽く頭を打っただけだから、大丈夫。CTもレントゲンも異常なしだから大丈夫」

大丈夫って言いながら
由紀の涙は止まらない。

お前泣きすぎ。

ペロリと伸ばしている手を舐めると、また泣く。

「ごめんね。マルちゃん」

お前の身体の水分は、全て涙で作られてるようだな。

「飼い主失格だよ。ごめんね。もう絶対こんな目にはあわせないから」

おぉ頼むぞ。期待してる。

「マルちゃんは私の大切な家族なんだから」

家族か……俺はお前の男のつもりなんだけどね。
苦笑いで由紀の手をまた舐める。

「もう、男なんていらない」



これは



嘘だろう。期待してない。