マルカポーネの心配事


俺の願いが天に通じたのか
ヤツはそれから現れず

平和が続く。

由紀は寂しそうで
タメ息ばかりしてたけど
俺は幸せだった。

「明日、久々に走りに行こうか」

金曜の夜
俺の身体を撫でながら由紀が言う。

「わんっ!」
俺は元気に返事した。

ひゃっほー!
可愛いおねーちゃん達、待ってろよ。
俺の肉球と舌でメロメロにしてやっからな。

ダチに会うのも楽しみだ。
豹柄チワワと半蔵は来るかな。

俺は思い出したように由紀の膝から飛び降り、ドッグラン仲間の課長からもらった小さなフリスビーをくわえて由紀に渡す。

「これを忘れるなって?わかった。明日持って行こうね」

由紀の笑顔に俺のテンションも上がる。

「用意しておこーかなー」のん気な声を出し、日焼け止めの大きな帽子とか、噛みごたえのあるオエッとくる犬用ガムの匂いに似ている手袋を出していると……玄関のチャイムが鳴る。

嫌な予感が背中を走る。

由紀のスマホも鳴り、目線を走らせてから両手を頬に当て、気分高揚した感じで玄関のカギを開けると

ヤツが立っていた。