「なあー、まだ寝ぇへんの?」
「んー、待って、もうちょっと」


深夜1時46分。

菜乃はドラマに釘付けで、
寝ようとしない。


ボクはもう、結構眠かった。


「これ、録画してんねやろ?」
「うん…そうだけどね、ここまで見ちゃったら、見たい」
「うーん」


やっぱり、寝なそうや。


「ボク、先寝るで?」
「んー」


テレビに目を向けたまま、
そんな曖昧な返事をした。


「…今なら、抱きしめて寝たるのになー」
「!」


さっきまで、ドラマに見入っていたのに、
そう言うと、こちらにパッ、と目を向けた。


「ん?」


どうするんや、ということ。
もう一度、伝えてみた。


菜乃は、もう一度、テレビを見た。
少し、名残惜しそう。
でも、テレビを消した。


「…寝るっ」


ボクの方に、ペタペタ、と歩いてきた。


「はい、ボクの勝ち!寝よ!」


2人、ベッドに入った。

横向きになって、菜乃を後ろから抱きしめる。

シャンプーの、いい匂い。


「一緒に寝たかったんや?」
「…うん」
「やった、ボク、ドラマに勝ったで」


菜乃は、向きを変えて、こちらを向いた。


「…浩二、ずるいよ」


ボクの胸に顔をうずめ、そう呟いた。

それが可愛くて、抱きしめた腕に力が入った。



End.



→あとがき