竜崎高校の朝は壮絶だ。
厳しい朝練の後の空腹を満たすため、HRがはじまる前の短い時間で、生徒たちは購買に殺到する。
荒れ狂う生徒と、それに対応する購買のおばちゃんのバトルを横目に、私は足早に廊下を行く。
「・・・みんな、朝から元気だな」
私自身朝は強くないので、正直うるさくて仕方がない。おばちゃんも朝からよくやるよ。
私はわふうーっと大きなあくびをする。
「くっそー。お母さんめ。なんで目覚ましが鳴る前に起こすかなー。おかげで寝ざめが悪・・・・ぶふっ!!」
廊下の角を曲がったところで、頑丈な壁に激突して廊下に転がった。
「イタタタ・・・」
「・・・・・いってーな。テメエどこ見て歩いてんだコラ」
壁に激突した鼻の頭を擦りながら体を起こすと、ガラの悪いデブ・・・・じゃなくて、人。多分、先輩?が私を睨んでいた。
そうか、激突したのは壁じゃなくてこのデブ・・・じゃなくて、この人だったらしい。
「・・すいません。ちょっと不注意で」
「すいませんじゃねーよ。テメエどこのクラスの奴だ、アア?」
とりあえず謝ってみたけど、余計に睨み方が悪くなった気がする。あああああこれって結構ヤバいやつじゃね?
私殴られんじゃね?
「すいません。ほんと眠くて、私の不注意です。はい。」
「ナメてんじゃねえぞコラ」
ガラの悪い多分先輩のデ・・・・人は、すんごい剣幕で私の胸倉を掴んだ。
ああああああああやっぱりヤバいやつだこれ、私今日授業受けられないかも。
「不注意だと?テメエどこのクラスの奴だって聞いて・・・・」
そこまで言うと、ガラの悪い(以下同文)はピタリと動きを止めた。
「・・・・・?あの、」
「・・・・・・・お前、もしかして、二年の・・・・市松ってやつか・・・?」
そのまま、まじまじと私の顔を見てくる。
「え?・・・・あ・・・そうですけど・・」
恐すぎて超泣きそうだったけど、何とか堪えて恐る恐る答えると、デブの表情が一気に変わる。
「あ・・・いや、その・・・・・悪かったな!!!」
ちょっと乱暴に私から手を離すと、それだけ言って私を置いて逃げるように走って行ってしまった。
・・・・なんなんだおい。
助かったけども、なんか妖怪扱いされたみたいで全然嬉しくない。
暫く呆然としていたが、ふと周りからの視線に気がついて、私は慌てて歩き出した。
ヤバいヤバい。皆超見てるし。
目立たないように髪を切って、ズボンで登校したハズなのに。
最後にはほとんどかけ込むようにして、2年C組のドアを開ける。
「おーっす」
「はよー。市松ー」
「おはよー」
クラスメイトと挨拶を交わして、一番後ろの自席に着くとぱったりと机に突っ伏す。
「市松どしたー?朝からぐったりして」
チュッパチャップスを咥えながら覗き込んできたのは、隣の席の八雲亮太だ。
「・・・・目立った」
「は?」
「デカイデブに絡まれて捕まれて顔見られて逃げられたら超目立った」
「・・・・ いや、意味わかんねーし」
「八雲君ー。何で私目立つのかなあ」
「説明する気もねーのな」
訴えるように八雲君を見る。
「何があったか全然解らんが、お前が目立つのは仕方ねえだろ」
八雲君はくわえていたチュッパチャップスのコーラ味を出すと言った。
「お前、女だし?」
そうだ。あのデブが逃げ出したのは、私が学校の裏番長だったことに気付いたから
・・・・・・・・ではなく、私が女だからだ。
今まではできる限り面倒なことに巻き込まれないように、
ジミーに、目立たず空気を読んできた私だったが
こんなに目立つようになってしまったのは、つい三日前のことだ。
「…は?交換入学!?」
突然職員室に呼ばれたと思ったら、担任の由香里ちゃんから衝撃の報告をされた。
「そうそう。男子校って最近入学者が減っているらしいのよ。だからそろそろ共学にしようかなーって考えてるんですって。それで、その事前準備?ってことで、姉妹校のうちから交換入学生を出すことになったのよ」
由香里ちゃんは昨日サロンで新しくしたネイルを見ながら、ゆるーく話す。
事前準備?って、教師が疑問形でしゃべるのってどうなのよ。
「え・・・・でも、なんで私なんですか?」
「ああ・・・それは、まあ誰でも良かったんだけどー」
「え、そんな適当!?」
危な。思わずそのネイルについてるストーンひっぺがすとこだった。
「向こうの校長に頼まれちゃったから面倒だけど仕方ないのよー。ね、男勝りな市松さんにはぴったりでしょ」
さらっと失礼なこと言いやがったけど。
ていうか由香里ちゃん。竜崎の校長財布にしてるって噂本当だったのか。
「そういうわけだから。ね、お願い市松さん。もう入学の手続きは済んでるから、明日から竜崎だから」
「いや、そんな可愛くお願いしてきても・・・・って、ええええええええ!まだやるって言ってないんだけど」
と、あれよあれよという間に・・・・ていうか、あれよあれよしている間もなく勝手に決まっていたせいで、私は翌日から竜崎に行くことになった。
厳しい朝練の後の空腹を満たすため、HRがはじまる前の短い時間で、生徒たちは購買に殺到する。
荒れ狂う生徒と、それに対応する購買のおばちゃんのバトルを横目に、私は足早に廊下を行く。
「・・・みんな、朝から元気だな」
私自身朝は強くないので、正直うるさくて仕方がない。おばちゃんも朝からよくやるよ。
私はわふうーっと大きなあくびをする。
「くっそー。お母さんめ。なんで目覚ましが鳴る前に起こすかなー。おかげで寝ざめが悪・・・・ぶふっ!!」
廊下の角を曲がったところで、頑丈な壁に激突して廊下に転がった。
「イタタタ・・・」
「・・・・・いってーな。テメエどこ見て歩いてんだコラ」
壁に激突した鼻の頭を擦りながら体を起こすと、ガラの悪いデブ・・・・じゃなくて、人。多分、先輩?が私を睨んでいた。
そうか、激突したのは壁じゃなくてこのデブ・・・じゃなくて、この人だったらしい。
「・・すいません。ちょっと不注意で」
「すいませんじゃねーよ。テメエどこのクラスの奴だ、アア?」
とりあえず謝ってみたけど、余計に睨み方が悪くなった気がする。あああああこれって結構ヤバいやつじゃね?
私殴られんじゃね?
「すいません。ほんと眠くて、私の不注意です。はい。」
「ナメてんじゃねえぞコラ」
ガラの悪い多分先輩のデ・・・・人は、すんごい剣幕で私の胸倉を掴んだ。
ああああああああやっぱりヤバいやつだこれ、私今日授業受けられないかも。
「不注意だと?テメエどこのクラスの奴だって聞いて・・・・」
そこまで言うと、ガラの悪い(以下同文)はピタリと動きを止めた。
「・・・・・?あの、」
「・・・・・・・お前、もしかして、二年の・・・・市松ってやつか・・・?」
そのまま、まじまじと私の顔を見てくる。
「え?・・・・あ・・・そうですけど・・」
恐すぎて超泣きそうだったけど、何とか堪えて恐る恐る答えると、デブの表情が一気に変わる。
「あ・・・いや、その・・・・・悪かったな!!!」
ちょっと乱暴に私から手を離すと、それだけ言って私を置いて逃げるように走って行ってしまった。
・・・・なんなんだおい。
助かったけども、なんか妖怪扱いされたみたいで全然嬉しくない。
暫く呆然としていたが、ふと周りからの視線に気がついて、私は慌てて歩き出した。
ヤバいヤバい。皆超見てるし。
目立たないように髪を切って、ズボンで登校したハズなのに。
最後にはほとんどかけ込むようにして、2年C組のドアを開ける。
「おーっす」
「はよー。市松ー」
「おはよー」
クラスメイトと挨拶を交わして、一番後ろの自席に着くとぱったりと机に突っ伏す。
「市松どしたー?朝からぐったりして」
チュッパチャップスを咥えながら覗き込んできたのは、隣の席の八雲亮太だ。
「・・・・目立った」
「は?」
「デカイデブに絡まれて捕まれて顔見られて逃げられたら超目立った」
「・・・・ いや、意味わかんねーし」
「八雲君ー。何で私目立つのかなあ」
「説明する気もねーのな」
訴えるように八雲君を見る。
「何があったか全然解らんが、お前が目立つのは仕方ねえだろ」
八雲君はくわえていたチュッパチャップスのコーラ味を出すと言った。
「お前、女だし?」
そうだ。あのデブが逃げ出したのは、私が学校の裏番長だったことに気付いたから
・・・・・・・・ではなく、私が女だからだ。
今まではできる限り面倒なことに巻き込まれないように、
ジミーに、目立たず空気を読んできた私だったが
こんなに目立つようになってしまったのは、つい三日前のことだ。
「…は?交換入学!?」
突然職員室に呼ばれたと思ったら、担任の由香里ちゃんから衝撃の報告をされた。
「そうそう。男子校って最近入学者が減っているらしいのよ。だからそろそろ共学にしようかなーって考えてるんですって。それで、その事前準備?ってことで、姉妹校のうちから交換入学生を出すことになったのよ」
由香里ちゃんは昨日サロンで新しくしたネイルを見ながら、ゆるーく話す。
事前準備?って、教師が疑問形でしゃべるのってどうなのよ。
「え・・・・でも、なんで私なんですか?」
「ああ・・・それは、まあ誰でも良かったんだけどー」
「え、そんな適当!?」
危な。思わずそのネイルについてるストーンひっぺがすとこだった。
「向こうの校長に頼まれちゃったから面倒だけど仕方ないのよー。ね、男勝りな市松さんにはぴったりでしょ」
さらっと失礼なこと言いやがったけど。
ていうか由香里ちゃん。竜崎の校長財布にしてるって噂本当だったのか。
「そういうわけだから。ね、お願い市松さん。もう入学の手続きは済んでるから、明日から竜崎だから」
「いや、そんな可愛くお願いしてきても・・・・って、ええええええええ!まだやるって言ってないんだけど」
と、あれよあれよという間に・・・・ていうか、あれよあれよしている間もなく勝手に決まっていたせいで、私は翌日から竜崎に行くことになった。