つまりは好きな人が居るからごめん、そういうことなんだろう。辛い気持ちが分かるほどの好きな人が居るのだと。だから君の気持ちは分かるんだって…でも。
…どうしてコイツは、こんなに上手いんだろう。てか、こんなに優しいのに諦めるしかない断り方、いつどこで身につけて来るんだろう。
ただの一言で終わらせない、優しさで包むようなその気遣い。君の想いは伝わってるんだよと、本人にちゃんと分からせてあげる思いやり。そしてだからこそ…謝る事しか出来ない自分、君を受け入れられない事への謝罪。
結局は可能性は無いよと、そういう事なんだけど、でも告白した方も片思いをしてきた自分だからこそ分かってあげられる、そんなに好きな人が居るなら諦めるしかないと、自ら区切りをつけたような、そんな風に思えるようになっていて…だからかな。振られたって実感よりも、その気遣いに応えたいと、そう思えるようになってると思う。だから、傷は浅い。
泣いていたその子、諦めないと言っていたその子が「分かった」と、素直に受け入れるのを見てあたしは思った。結局最後まで酷い事なんて一つも言わず…本当に、優しさを見せた対応だった。こんな場面を何も知らずに見ていたら、もしかしたらあたしもファンになっていたかもしれない。
「…ありがとう。ごめんね、時間使わせちゃって」
ーーそして、その子が告げたその言葉で、やり取りは終わりを迎えたらしい。
清々しい表情のその子。それに本当に良かったなぁとあたしは思いながら…ふと気がついた。
…や、ヤバくない?
もしかして、ヤバイよね⁈
置かれた状況を理解した瞬間、あたしは慌ててキョロキョロと辺りを見回し始めた。探してるのだ。…何をかって?それはもちろん隠れる場所だ!



