「…あれ?」
…だけど、今日は違ったらしい。
あたしは出て右側、校舎裏へと続く方を見つめたまま、思わず足を止める事になる。
それは校舎の角。そこに一人の女子生徒が俯いたまま佇んでいて…両手で目をこするような、おさえるような仕草をしているのが目に入った。
…もしかして…泣いてる?
角より少し向こう側に居るその子は、角を曲がった向こう側を向きながら一人で泣いている様だった。
そんな彼女の様子に気づいてしまったらなんだか心配になってきて、むくむくと膨れ上がった勝手な正義感から放って帰る訳にもいかず、あたしは進む方向を変えてその子の元へと向かう。…すると、
「でもわたし、諦めない…諦められないの」
聞こえて来たのは、泣いてるその子、本人の声。どうやら曲がった向こう側に誰か居るらしくて、その誰かと話しているらしい。
それにあたしは、あれ?もしやケンカ…?うん、きっとケンカだ!なんて、単純に簡単に、一瞬にして思い至った。…というかもうバカなあたしにはそうとしか思えなかった。だからこれは止めなきゃ!なんて、迷わず更に足を進めていき…
「でも俺は、君の事好きにならないと思うよ」
…何だか聞き覚えのあるその声が聞こえて来た瞬間、ピタリとその足を止めた。



