その単語だけはやっぱり分かりやすくて、あたしの頭でもすぐに処理出来た。

バカと言われた=黙ってる訳にはいかない、的な繋がりがすぐに出来たおかげで、結構すんなり機能停止状態を解除する事が出来たのだ。


「さっきから聞いてれば、何かすごい刺々しい事ばっか言ってくるよね進藤は!」


今だってもちろんそう!でも思えば始めの方だってそんなに優しい事は言ってなかった気がする。やけに答えに渋ってたり、感謝しても謝罪してもイマイチな反応だったような…それなのに優しいなんて思ってしまったのはきっと、奴が見せた笑顔のせい!それに昨日の出来事と噂とが重なって…そうだ。それにあたしは騙されたんだ!


「全然優しくないじゃんよ!噂はどこいった噂は!あの笑顔はどこいった!優しいあんたはどこいった!」


バカと言われた反動からか、どんどんこの進藤とかいう男子への不平不満が湧き上がってきた。そしてムカムカイライラしたその先、口をついた最後の言葉は、やっぱりこの言葉だった。


「あー騙された!すっかり騙された!」


悔しい!本当ムカつく!

…なんか虚しい…っ!


溢れる想いが爆発した後、そこに生まれた心の隙間にひゅうっと風が吹く。…あたしはもうなんだか、すっかり詐欺にでもあったようなそんな気分だった。

…すると、


「…騙された?」


重々しく、今度は進藤が口を開いた。そしてその言葉は荒れたあたしの心境に、更に追い打ちをかけようとしてくる。