「あ…えっと、ごめ、」
「とりあえず手、離してくれない?」
「あ、はいすいません……って、そうじゃなくて!」
進藤君の言葉に従って手を離すと同時に、思わず目を真ん丸くしたまま止まっていたあたしの思考がゆっくりと動き始めた。
刺々しい進藤君。でもさっきは優しくて素敵だった進藤君…あれ?でも迷惑そうな進藤君?
今目の前に居る進藤君に対して、頭の中でさっきまでの進藤君と今の進藤君がコロコロ入れ替わった。さっきと今、その二人の言葉と態度が繋がらず、どうしてもあたしの目の前の進藤君が分からなくなる。考える程にもう訳が分からなくなる。
「し、進藤君何か違くない?違うよね?なんで?どうして? 」
「どうしてって…おまえ、俺の話聞いて無かったの?」
「き、聞いてたよもちろん、もちろん聞いてたよ!あ、なら用があったって事?そ、そっかそうだったのか、そしたらごめん!いやほんとごめん!」
「……」
「まぁ、そっか。そうだよね…でもさ、もう乗り過ごしちゃった訳だし仕方ないよねって事でここは一つ、とりあえず次の電車まででい、」
「やっぱ聞いてないだろ」
「え?だから聞いてたって」
「……」
「え、何?何なの?…って進藤君怖い、さっきからやめてよほんと、自分じゃ分かって無いだろうけど相当怖いよその顔」
「……」



