…でも、残念ながら現実には止まってたのはあたしの思考だけで、ただその一瞬にしてあたしが現実逃避をしていたってだけの事だった。
だって進藤の方はガンガン通常通りの進んでいた。
進藤が、迫ってきた。
「聞いてる⁈ 待って本当、理解出来ない!」
「…なんで?待ったら分かってくれる訳?」
「い、いや、分かる分からないっていうか、てゆーか分からないっていうか!」
「意味が分からないし、てゆーかてゆーかうるさい。つーか逃げんな」
「いや逃げるよ!なんで止まんないの⁈ おかしいじゃん!なんでこっち来るの⁈ 」
「なんでって、言っただろ。キスするんだよ」
「キっ…お、おかしいって!おかしい!おかし過ぎる!しかもこんな、ここ廊下だよ⁈ 誰か来たら勘違いされる!」
「あぁ、いいねそれ。そしたらもう実質俺の物だ」
「はぁ⁈ 訳分かんない!俺の物って、人を物みたいにっ……ん?」
…あれ?俺の物?
お、俺の物って、誰が?どれが?
「あ、あたしが、進藤の…物?」
思わず呟いた独り言に、迫り来る進藤の足がピタリと止まった。それにあれ?と思って、自然と確認した彼の足元から顔をあげると…
「どういう意味か、分かった?」
なんて、それは正しく意地悪な、それでいてなんだか期待しているような、そんな奴の感情がその表情からハッキリと、手に取るように分かった。



