「…嫌ってる?そんな訳ないよ」
…やっぱり返ってきたのは、そんな言葉。あたしの想いとは正反対の、その答え。
「神崎サンの事、俺が嫌う訳ないでしょ」
ニッコリ微笑んだ進藤は、さも当たり前かのようにそう言った。あまりにも自然に、それ以外の答えなんてある訳がないといったように、奴はそれをあたしに告げる。
「あぁもしかして俺、知らない内に神崎サンの事傷つけちゃったのかな。でもそれはきっと勘違いだから…気にしないでね。ごめんね」
そう告げる奴のーー不自然なくらいの嫌味の無さ。あたしに気遣う優しい言葉と、傷つけた自分に対して反省をするような態度。そんな奴の見せる噂のそれに、周りは「でたでた、学校一の優男!」「うわ、生で見ちゃった〜!」なんて騒ぎ立てた。またやってるよーなんて。女子はほんと好きだよなーなんて。
…でもこれは……つまり。
違う、そうじゃない。あたしが欲しかったのはそんなんじゃない。
「……嫌いだ」
ポツリと溢れたあたしの呟きに、騒めいていた周囲がそれぞれで言葉をのんだのが分かった。
でも…そんなの、関係ない。
「あたしはーーあんたなんか、大っ嫌い」



