優しくないっ、優しさを感じない!



まだ入学して3ヶ月程しか経っていない時期。それなのに同じクラスでも無いあたしの名前を知ってるなんて普通に驚きだったのだ。しかもフルネームで!


「あー、なのにごめん。あたしそっちの名前知らなくて…でもなーんか聞いた事あるような気がすんだよねぇ、昨日からさ。何かよく噂されてない?チラッとしか見たこと無いからアレなんだけど…違う?なんか前に教えて貰った事があるような…」

「…それ、俺の事?」

「そう、多分。確かね、すっごい優しいんだって言ってた…そう!昨日拾って貰ってなんか優しかったからさ、だからチラッと思い出したのかもしんない!きっとそう!」


するとあたしに、かつての何処かにやっていた記憶がバッチリ蘇ってきた。


そうだ確か、入学してちょっと経った頃に同中の子が言ってたんだった、イケメンが居るって!しかもすごい優しいんだって、みんな言ってるんだって!


その頃のあたしは、もちろん変わらずコースケの事しか頭に無かった事もあって、ふーん、そうなんだーくらいで聞き流していた訳だ。正直他の男子の話とか興味無さ過ぎた。まぁ今思えば少し失礼だったかなぁとその子に思うくらいに、それくらい興味が湧かなかった訳だけど…でもちゃんと聞いておけばなぁと、今になって思う事になるなんて。


「…ええと…ごめん。名前何て言うんだったっけ…?」


結局、肝心な所が思い出せなくて、もっと失礼な事をしてしまう事になってしまった。あれだけ噂されてたよね?とか何とか言っておいて結局コレなんて…あたしだったら呆れるな。というか怒っても可笑しくないかもしれない。