「ねぇ、教えてよ。何を忘れようとしてた?何を無い事にしようとしてる?」
「……」
隣に居る進藤から注がれる視線。背の高い進藤から向けられる上からの視線。押し潰されそう。進藤にはいつもこういう雰囲気がある。見下されるような、威圧されるような、そんな気持ちを抱かされる。
「教えてよ。それってまさかーー俺の事じゃ、ないよね?」
「!」
…言い当てられたそれに、思わずビクッと反応してしまったあたし。…を、進藤が見逃すはずがない。
「…そうゆう事」
冷ややかな雰囲気と共に零された言葉が耳に入った。その瞬間、進藤の視線があたしから逸らされる。あたしの姿が映らないどこかへと向かう瞳、進藤は視界からあたしを追い出したのだ。それはまるであたしの存在が、存在自体が、進藤の中から消え去っていった様にあたしには思えて…
「…進藤?」
「……」
思わず声をかけていた。でも、返事がない。
抱いたのは外へ追いやられるような感覚。それにあたしは焦りを覚えた。あたしは追い出されたんだ、進藤の中から。思考から。環境から。あたしが無い事にしようとしたように、同じように進藤はあたしの事を…
「ねぇ進藤!」
やってしまった。進藤に呆れられた。進藤に諦められた。進藤に嫌われた。進藤に無い事にされた。
進藤にあたしはーー見捨てられたんだ。



