「あービックリした。…そうだ、昨日はありがとね」
まさかの人物に驚きつつも、あたしはとりあえず言わなければと思い浮かんだお礼をまず言ってみた。するとその人は「そんなに何度も言わなくていいよ」なんて、困ったように眉根をひっそりと寄せて答える。
「そう?何度も言ってる?まぁいいじゃんいいじゃん、減るもんでも無いしさ!」
そしてもう一度「ありがとう!」と、問答無用に告げると、次は少しだけ考える素振りを見せた後、その表情を少しだけ和らげてくれて…
「…どういたしまして」
と、ついにはニッコリと微笑んでくれた。
その時の彼が浮かべたにこやかなで爽やかな笑顔に…あたしは思わず、衝撃を受ける。むしろ感動してしまったりする。
…こ、これが男子高生の浮かべる笑顔なのか…?…いや違う、普通の男子高生とは違う!普通の男子にはこんな爽やかで優しげで穏やかな感じは無い!これはまるでレナちゃんの素晴らしさに近い笑顔!
「なんかすごいね!良い人な感じがする!」
大感激したあたしは、初めてコースケに話しかけた時みたいに思わず気持ちを言葉にしていた。するとそんなあたしの言葉を聞いたその人は、ピタリと、一瞬何かが引っかかったように動きを止める。
…でも、
「…そう?」
と、結局は何事も無かったかのようにまたもや笑ったままであたしに答えた。
その一連の流れに少しだけ、ん?と思ったけど、きっと照れてるんだろうなんて、あたしは特に気にしなかった。…まぁ、それよりももっと気になる事があったからでも、あるんだけど。
「ねぇそれよりさ、あたしの名前知ってたんだね」



