ーーそして、電車が一本、また一本と通り過ぎていく。
もう駅にはあたし以外に高校生らしき人は見当たらない。皆とっくに下校したのだろう。
あたしもそろそろ帰るかな…
でも…もしかしたらそろそろ来るかもしれないし…
あと何本かで帰ろう、なんて思っていたのに、ここまで待ったなら来るまで待っても変わらないんじゃないか…とも思い始めてきた。帰るためには絶対この駅を使うはずだし、ここにいる限り入れ違う事も無いし、まだ来てないって事は帰って無いって事だし…。
うん。よし、もう少し待ってみよう!
…と、気合いを入れ直したその時だった。
「…神崎 ヒロ?」
突如かけられた声に、あたしは反射的にその方へと顔を向ける。
するとあたしに声を掛けてきたのは、同じ高校の制服を着た男子だった。スラリと背が高くて、色素の薄めの茶色い髪の毛ーーあれ、なんか見覚えがある…ような…
「あっ、昨日の!」
そう。あたしの名前を呼んだこの人は確かに、確かに昨日ボタンを拾ってくれた男子だった。



