……なんでだろう。こんな奴、別に好きじゃ無い。
好きじゃ無いし、だから優しくなんてされなくて良い。本人からも何回も言われてきた事だ、今更それに対して何も思わないし、優しくされてなかった事だってちゃんと分かってる。分かってるのに、それなのに…
「…なんで、だろう」
なんでこんなに、悲しいんだろう。
知りたくなかった。こんな事教えて欲しくなかった。全部レナちゃんのものだったなんて。あたしの心を動かすもの、支えるもの、あたしがもらったもの全て、全てはレナちゃんのものだったなんて。
あたしはずっと…勘違いしてたんだ。
ーー辛い、
辛い、もう嫌だ…っ、
「進藤なんて、大嫌い…っ!」
そう、生まれた想いを感情のままに吐き出した、その瞬間だった。
「っ!」
潜り込んでいたあたしを取り囲む真っ暗な世界が、重くよどんだ空気が、一気に取っ払われて、軽くなった身体に外の空気が触れる。
それと同時に目に入ってきたのは白、シーツの白、壁の白、閉じられたカーテンの白、そしてーー見知った奴の、ワイシャツの白。
「いい加減にしなよ」
その声に、こもっていたあたしを外へと無理矢理出した奴の白から、徐々に視線をあげる。そこには当然、奴の顔があった。
「おまえさ、俺の事…ナメてんの?」
奴のーー怒りを露わにする表情が、そこにはあった。



