由佳は再び廊下を駆け抜けた。
由佳が走り去ろうとした時、奈津子が最後に由佳に残してくれた言葉が、由佳の頭に何度も響いた。
―― あとね、由佳!私が薫に振られた理由、教えてあげる!
――「俺は笠原のことしか考えられない」だってさ!
由佳は全速力で駆け抜けた。
振り返る生徒たちなどお構いなく、自分が出せる全ての力を振り絞って走った。
どうか神様、小野寺薫の心にまだ私が存在していますように――…。
由佳はそう祈りながら、全速力で走った。
怖いものはもう何もなかった。
どうにでもなれと思えた。
ただ今は、薫が好きだという気持ちだけが溢れていた。
今すぐにこの気持ちを、薫に伝えたかった。

