嘘つきなポーカー 1【完】



由佳は再び廊下を駆け抜けた。


由佳が走り去ろうとした時、奈津子が最後に由佳に残してくれた言葉が、由佳の頭に何度も響いた。


―― あとね、由佳!私が薫に振られた理由、教えてあげる!

――「俺は笠原のことしか考えられない」だってさ!



由佳は全速力で駆け抜けた。

振り返る生徒たちなどお構いなく、自分が出せる全ての力を振り絞って走った。


どうか神様、小野寺薫の心にまだ私が存在していますように――…。


由佳はそう祈りながら、全速力で走った。


怖いものはもう何もなかった。

どうにでもなれと思えた。

ただ今は、薫が好きだという気持ちだけが溢れていた。

今すぐにこの気持ちを、薫に伝えたかった。