嘘つきなポーカー 1【完】



「それに、少しだけ悔しい気持ちがあったのも事実かな。」


奈津子は力無く笑った。


「だけど私はもういいの!実は少し前、薫にもう1度ちゃんと告白して玉砕したところだから!」

「え…?」

「もう私は薫にすがったりしない。だって私に居場所を与えてくれるのはもう、薫だけじゃなくなったから。」

「……。」

「私には由佳たちが居る。だからもう平気!」


そう言って笑った奈津子の目には涙が滲んでいて、由佳は心が締め付けられるような感じがした。


「行くんでしょ?薫のところ。」


奈津子は言った。


「ほら、変な女に取られちゃうよ!そんなことさせたら、私が承知しないから!」

「…奈津子。ありがとう。」


由佳は心からそう呟いた。


「ほら、いいから走って!」


奈津子はそう言って、由佳の背中を押した。