「それに、少しだけ悔しい気持ちがあったのも事実かな。」
奈津子は力無く笑った。
「だけど私はもういいの!実は少し前、薫にもう1度ちゃんと告白して玉砕したところだから!」
「え…?」
「もう私は薫にすがったりしない。だって私に居場所を与えてくれるのはもう、薫だけじゃなくなったから。」
「……。」
「私には由佳たちが居る。だからもう平気!」
そう言って笑った奈津子の目には涙が滲んでいて、由佳は心が締め付けられるような感じがした。
「行くんでしょ?薫のところ。」
奈津子は言った。
「ほら、変な女に取られちゃうよ!そんなことさせたら、私が承知しないから!」
「…奈津子。ありがとう。」
由佳は心からそう呟いた。
「ほら、いいから走って!」
奈津子はそう言って、由佳の背中を押した。

