由佳は奈津子を人気のない廊下まで連れて行くと、足を止めた。
「何?そんなに急いでどうしたの?」
奈津子は息を切らす由佳を見て、驚いたように尋ねた。
すると由佳は奈津子の目をじっと見つめて、口を開いた。
「奈津子…私小野寺薫のことが好き。」
一瞬、2人の間に流れる時が止まった。
由佳の一言に、奈津子は表情を変えず無反応だ。
由佳は構わず続ける。
「応援するって言ったけど、本当はそんなこと思ってなかった。奈津子が小野寺薫とくっ付いたら嫌だって思ってた…」
「……。」
「奈津子のこと応援出来なくてごめん。だけど私はどうしても…小野寺薫が好き。」
「……。」
「奈津子だけにはちゃんと言わないとって思った。」
由佳はそう言うと、奈津子にどんな怒りの言葉を浴びせられるだろうと息を呑んだ。
奈津子の想いも知っていて、応援するとまで言ったのに、由佳はそれを裏切ったのだ。

