そして結局何も言えないまま、由佳は金曜日を迎えてしまった。
由佳はまるで屍のような顔をしていた。
「あんた、大丈夫?具合悪いの?」
奈津子は明らかにブルーなオーラを発する由佳を見て、心配そうにそう言った。
「ううん大丈夫…。」
由佳はそれどころでは無かった。
何せ、今日は由佳にとって魔の金曜日なのだ。
今日、由佳の想い人である薫が、見知らぬ女の子とくっ付いてしまうかもしれないのだから――…。
「そんなに死んだ顔してるなら、何か行動すれば良かったのに。」
華代は由佳を見て、口を膨らませながら呟いた。
「由佳ちゃんにはほとほと呆れたよ。」
「華代…そんな追い詰めるようなこと言わなくても……」
「これぐらい言わないと由佳ちゃんはいつまでも逃げ続けるからね!」
華代にそう言われ、由佳はシュンとした。
一方、渦中の人物である薫は由佳の斜め後ろの席で涼しい顔だ。
由佳がこの3日間、自分のことで夜も眠れぬほど思い悩んでいたなど知る由もないだろう。

