色々と考えを巡らせながら薫を探して廊下を歩いていると、2人の男女の声が聞こえてきて由佳は立ち止まった。
「薫くん、金曜日の放課後、いいかな?」
「薫」という名前に反応して由佳がそーっと覗くと、そこにはこの間薫と楽しそうに話していた女の子と薫が、2人で立っていた。
由佳は聞き耳を立てた。
「金曜日の放課後ね…オッケー。」
薫がそう言うと、女の子は「よろしくね。」と言ってその場を去る。
その時、ちょうど立ち止まって話を聞いていた由佳と女の子が鉢合わせになった。
「あっ、ごめんなさい…」
そう言って顔を上げた女の子の頬はとても赤く、そして表情が緩んでいる。
由佳の心がズキンと痛んだ。
きっとあの子は薫のことが好きだ。
あの表情がその全てを物語っている。
あれは恋する女子の表情だった。

