由佳と華代は、かつて由佳がよく1人になりたい時に訪れていた非常階段の踊り場にやって来た。
ここは人が来ることもないので、2人きりで話をするには持ってこいの場所だった。
由佳は華代に全てを話した。
クリスマスイブの夜に奈津子とキスをする薫を見て胸がざわめいたこと、正月に奈津子に言われたこと、それ以来薫とどう接したらいいのか分からなくなって薫を避けてしまったこと、そしてついさっき、薫にキスをされたこと――…。
華代は黙って頷きながら由佳の話を聞いてくれていた。
「同情、かぁ。」
由佳が全て話し終わると、華代は呟いた。
「私は2人を今までずっと見てきたけど…小野寺くんが同情で由佳ちゃんと一緒に居るなんて1度も思ったことないな。」
「…でも、奈津子が薫は同情で誰かに優しく出来る残酷な人だって言ってた。」
由佳がそう言うと、華代は難しそうな顔をした。
「うーん、でも小野寺くんはすごく由佳ちゃんを大切にしているように見えたよ?」
「…だけど小野寺薫は同情じゃないって否定しなかったもん。」
由佳は自分でそう言って、悲しくなった。

