「どんだけ待っても家から一向に出てこねぇし、電話も全く通じねぇし…」
「……。」
「心配しただろーが。」
真っ直ぐと由佳の目を見つめながらそう言う薫に、由佳の心臓が跳ね上がる。
由佳はそれがとても悔しくて、腹立たしくて、口を開いた。
「私、お正月奈津子と一緒に過ごしたの。」
「…あ?」
「その時、奈津子から小野寺薫の話聞いた。昔の事とか、奈津子との出会いとか。」
「……。」
「奈津子、相当小野寺薫のこと好きみたいだった。あんなに好きでいてくれる子って、なかなか居ないと思う。」
「……。」
黙っている薫の表情が、次第に険しくなる。
「小野寺薫は、奈津子と一緒にいてあげたほうがいいんじゃないかな。」
「……。」
由佳は平静を装ってそう言うが、その声はかすかに震えている。

