薫は黙って由佳の腕を引きながら歩いていく。
その後ろ姿を見て、少しでも鼓動が早くなってしまう自分はどうかしていると由佳は思った。
そして薫は誰もいない空き教室を見つけるとそこに入り、扉をピシャリと閉めた。
「説明してもらおうか。」
薫は由佳を壁際まで追い詰めると、由佳の目をじっと見つめながら呟いた。
「…何を。」
「とぼけてんじゃねぇぞ。何で今日先に家を出た?」
「…何となく。」
由佳が目を逸らしながら答えると、薫ははぁーと大きなため息をついた。
「クリスマスイブの日のことは、あんなことして悪かったと思ってる。」
「……。」
「だからってそんなあからさまに俺を避けなくてもいいだろ。」
「……。」
由佳は黙り込んだ。
薫の顔が直視できない。

