薫はズカズカと由佳のもとに歩み寄ると、由佳の腕を掴んだ。
「話がある。」
薫は由佳の目をじっと見つめながらそう言った。
由佳は高鳴る鼓動を抑えるのに精一杯で、何も言葉が出てこなかった。
「匠、こいつ借りてく。」
薫はそう言って由佳の腕を引く。
由佳は必死に目で松本先生に助けを求めるが、それも虚しく松本先生は笑顔で答える。
「どうぞどうぞ。」
そして薫は由佳の腕を引いて保健室を出ると、ピシャリとドアを閉めた。
「頑張れよー、恋する少年少女。」
2人が出ていった扉を遠い目で見つめながら、松本先生は小さく呟いた。

