奈津子はため息をついて続けた。
「薫の場合、全部同情なの。私が頼めばキスしてくれたし、抱いてくれた。…それでもそこには愛がないの。」
「……。」
「好きだって言わないのよ。」
奈津子は続けた。
「それでも良かった。たとえ同情でも、大好きな薫のそばに居られるだけで私は良かった…。」
「……。」
すると奈津子は悲しげに呟いた。
「…だけどいつからだろね。薫が同情すらしてくれなくなったのは。」
「……。」
「由佳が現れてからだよ…」
「え…?」
黙って話を聞いていた由佳だったが、突然登場した自分の名前に驚いて、奈津子に聞き返す。
「薫が由佳と関わるようになってから、薫は私のそばから離れて行ったのよ。」
奈津子は力無く笑った。

