―――…。
そこまで話すと、奈津子は深くため息をつきながら言った。
「その日以来、私は薫に恋に落ちたわ。薫は私の心の穴を埋めてくれる、唯一の存在だった…」
奈津子の言葉に、由佳は呟いた。
「そんな過去があったんだね…」
すると奈津子は力無く笑って答える。
「だけどそれも私の一方的なもので、薫が私の事をそういう対象として見てくれることは1度も無かった。」
「……。」
「薫は残酷なの。優しくするくせに、そこには愛がないんだもの。」
「……。」
そして奈津子は、遠くを見つめながら呟いた。
「…全部同情なのよ。」

