嘘つきなポーカー 1【完】




「薫、遅いわね。」


そわそわしながら怒ったようにそう言う奈津子だが、心持ちかその表情は緩んでいる。


「今日、可愛いね。」


由佳がそう言うと、奈津子は「うるさいわね!」と顔を逸らした。

大好きな薫が来るのだ、奈津子に気合いが入るのも無理はない。



17時ちょっと過ぎ、薫が待ち合わせ場所に姿を見せた。

なんという事はなく歩いて来る薫だが、彼には無数の女性からの視線が集まっている。


「ねぇねぇ、あの人すごくかっこよくない?」


近くの女の人が、薫を見てそう言うのが聞こえた。

それを聞いてか聞かずしてか、奈津子が薫に向かって叫ぶ。


「薫!遅い!4分遅刻よ!」


薫は右手を上にあげると、急ぐ様子もなくこちらに歩いて来た。