嘘つきなポーカー 1【完】



由佳は足がすくんで動かなかった。

きっと自分はこの人たちにボコボコにされてしまうのだ、とぎゅっと目をつむった。


その時、男たちのうちの1人が口を開いた。


「次郎さん、この女、あの時の人じゃないっすか…?」


その声はどこか怯えている。

由佳はゆっくりと目を開く。


「あ?変なこと言ってねぇで、とっととやっちま……」


その時、リーダー格の男の目つきも変わった。

それは何か見てはいけないものを見てしまったような、恐怖に怯える目だ。


「お前…まさか…あの男の…!」


由佳はすぐに、“あの男“が薫を指していると分かった。


「今頃気づいたの?さっさと退散しないと、あの男が来ちゃうかもね?」


由佳はそう言って、ニヤリと笑った。

すると、男たちは蜘蛛の子を散らすように慌てて逃げ去った。