由佳は足がすくんで動かなかった。
きっと自分はこの人たちにボコボコにされてしまうのだ、とぎゅっと目をつむった。
その時、男たちのうちの1人が口を開いた。
「次郎さん、この女、あの時の人じゃないっすか…?」
その声はどこか怯えている。
由佳はゆっくりと目を開く。
「あ?変なこと言ってねぇで、とっととやっちま……」
その時、リーダー格の男の目つきも変わった。
それは何か見てはいけないものを見てしまったような、恐怖に怯える目だ。
「お前…まさか…あの男の…!」
由佳はすぐに、“あの男“が薫を指していると分かった。
「今頃気づいたの?さっさと退散しないと、あの男が来ちゃうかもね?」
由佳はそう言って、ニヤリと笑った。
すると、男たちは蜘蛛の子を散らすように慌てて逃げ去った。

