―――…。 その日の帰り道、由佳は和也に言われた言葉を思い出しながら1人で歩いていた。 ―― あいつ、親が居ないんだ。 ―― 小さい時に育児放棄されて、ずっと施設で育ってきた。 想像もしていなかった奈津子の過去に、由佳は衝撃を受けて呆然としていた。 「そんなこと言われても、どうしたらいいのさ…」 由佳は1人、そう呟いた。 その時、近くから女の人の悲鳴のような声が聞こえてきて由佳は我に返った。 「助けて!」 そう叫ぶ声に、由佳の足は反射的に声のする方向へ向かっていた。