「…なぁ、匠。お前知ってたんだろ?」 薫は一点を見つめながら呟く。 「ん、何のこと。」 余裕そうな表情でそう言って微笑む松本先生のほうを見て、薫はもう1度言った。 「細谷恭平のこと。」 「まぁ、知らなきゃ君たちがあそこに向かったなんて考えもしなかっただろうね。」 楽しそうにそう答えた松本先生を睨み付けて、薫は言う。 「何で俺に教えてくれなかった?」 「教えたところで悪いことしか起きない気がしたからね。」 「いつから知ってたんだ。」 「最初からかな。」 松本先生はそう答えると、続けた。