「でも、じゃあどうして彼らは退学を?」
由佳は尋ねた。
事がバレていないのなら、わざわざ退学するなんて不思議な話だ。
「2人が直々に退学したいと申し出てきたからだ。家庭の事情ということだが、おそらく昨日のことが原因だろう。」
「……そうですか。」
由佳が答えると、松本先生は遠くを見つめて困ったようにため息をつきながら言った。
「あいつらなりに、君たちや薫に落とし前をつけたかったんじゃないのか?」
その言葉で、由佳はもう1つ聞きたいことを思い出す。
「先生。」
「薫の状態のことだろ?」
由佳が言い出す前に松本先生はそう言って、ニヤリと笑った。
由佳は、この人には人の心を読み取るレーダーでも付いてるんじゃないかと、たまに怖くなるときがある。
「8針ほど縫ったみたいだけど案外傷も浅いし、大したこと無さそうだよ。」
「良かった…」
由佳は大きくため息をついた。
隣で華代も安心したように表情を崩した。
「一応近くの病院に入院してるよ。学校には盲腸で入院してるってことにしてあるけどね。」
「そうなんですね…。でも大したことなくて良かったです。」
「暇してると思うから、君たちもお見舞いに行ってあげてね。」
松本先生の言葉に、由佳と華代は頷いた。

