嘘つきなポーカー 1【完】



「小野寺薫が!ナイフで脇腹を刺されて、血だらけになってます!」


由佳が慌てたようにそう言うと、華代は目を丸くして息を飲んだ。

しかしその隣で、松本先生は落ち着いた様子で微笑んで口を開いた。


「大丈夫だよ。もうすでに他の人に連絡して、手当てするように言ってある。それに、あの様子じゃそこまで傷は深くないだろう。ピンピン動いていたしね。」


松本先生のあまりの落ち着き具合に、由佳も華代も呆気に取られた。

人1人が刃物で刺されたと言うのに。


すると松本先生は2人の心の中を読み取ったように、笑いながら言った。


「これぐらい、俺たちの世界では日常茶飯事だったのさ。」


こんなに爽やかに、なんて恐ろしいことを言うんだ、と由佳は鳥肌が立った。