「実は先生、若い頃はやんちゃしていてね。ここらでは有名な不良グループの頭をしていたんだよ。」


松本先生はバツが悪そうに苦笑いした。


「そこにやって来たのがまだ中学生になったばかりの薫だった。グループに入れてくれって、頼みに来たのさ。」


由佳と華代は、黙って話を聞いていた。


「動機は知らない。ただ、あの頃のあいつは今よりも瞳が死んでいた。きっと本人なりに何か抱えるものがあったんだろう。」

「……。」

「あいつは昔から武道をやらされていたみたいで、その強さと言ったらガタイの良い10人相手でも歯が立たないほどだった。」

「小野寺くん、さっきも相当強かったですもんね…。」


華代がそう言うと、松本先生は大きく頷いて続けた。


「当時、あいつの強さは有名で、この界隈の不良グループの人間であいつの名前を知らない人間は居なかったほどだ。」


由佳は薫にそのような過去があったことに驚きを隠せなかった。