嘘つきなポーカー 1【完】



誰よりも強くありたい。

どんな人間が由佳を傷付けようとも、自分が守ってやりたい。


その強い思いが故に、恭平は強さの意味を履き違えた。


恭平が中学2年になって少し経ったある日のことだった。


「なぁ、お前、空手強いってマジ?」


当時のクラスメイトだった中瀬という男子が、恭平に声をかけた。


恭平は小学生の頃から空手を習っていた。

もちろん、由佳を守るために自分から習いたいと母親に申し出たのだ。

中学生になった恭平の空手の腕は見事なものになっていて、県の大会で優勝するほどの実力だった。


そんな噂をどこからか聞き付けたのか、クラスの不良少年の中瀬が恭平に話しかけてきたのだ。