誰よりも強くありたい。
どんな人間が由佳を傷付けようとも、自分が守ってやりたい。
その強い思いが故に、恭平は強さの意味を履き違えた。
恭平が中学2年になって少し経ったある日のことだった。
「なぁ、お前、空手強いってマジ?」
当時のクラスメイトだった中瀬という男子が、恭平に声をかけた。
恭平は小学生の頃から空手を習っていた。
もちろん、由佳を守るために自分から習いたいと母親に申し出たのだ。
中学生になった恭平の空手の腕は見事なものになっていて、県の大会で優勝するほどの実力だった。
そんな噂をどこからか聞き付けたのか、クラスの不良少年の中瀬が恭平に話しかけてきたのだ。

