無言のにらみ合いが続いていた。
その時だった。
バリーンという音と共に、由佳たちの背後の窓ガラスを蹴り割って何者かが建物の屋根から侵入してきた。
「誰だ!」
恭平は反射的に振り返り、ナイフを侵入者のほうに向けた。
侵入者は黒いフードを深くかぶっており、顔が見えない。
「お前、何者だ!」
恭平がフードの男に気を取られている隙を見計らって、薫は恭平に殴りかかろうとした。
しかし殴りかかる寸前に恭平はそれに気付き、再びナイフを薫のほうに向けた。
その時、不運にもその鋭い刃が殴りかかろうとした薫の脇腹のあたりに刺さった。
「…っ」
薫の顔が、苦痛に歪むのが分かった。

