嘘つきなポーカー 1【完】



薫はそう呟くと、由佳と恭平のもとに足を進めようとした。

しかしその瞬間に恭平が突き付けたナイフが由佳の首に触れ、薫は足を止める。


「あと1歩でも動いてみなよ。この子の命がどうなるか分かってるの?」


恭平は口角を上げながら言った。

だがその表情はいつもの余裕そうな恭平の表情とは違い、少し焦りが見えた。



由佳は恐怖で身動きが取れずにいた。
何せ自分の首もとに鋭利なナイフが突きつけられているのだ。

薫も迂闊に手を出すことが出来ずにいた。

今1歩でも動こうものなら、由佳の首はナイフで切り裂かれてしまうだろう。