薫はそう呟くと、由佳と恭平のもとに足を進めようとした。
しかしその瞬間に恭平が突き付けたナイフが由佳の首に触れ、薫は足を止める。
「あと1歩でも動いてみなよ。この子の命がどうなるか分かってるの?」
恭平は口角を上げながら言った。
だがその表情はいつもの余裕そうな恭平の表情とは違い、少し焦りが見えた。
由佳は恐怖で身動きが取れずにいた。
何せ自分の首もとに鋭利なナイフが突きつけられているのだ。
薫も迂闊に手を出すことが出来ずにいた。
今1歩でも動こうものなら、由佳の首はナイフで切り裂かれてしまうだろう。

