ガチャ、と玄関の扉が開いた。
こんなタイミングで帰ってくるなんて、全く運が悪い。
漂う煙草の臭いと香水のきつい香り。
ソファでうずくまる由佳を、礼子は冷たい眼差しで見つめた。
「どう?友達ごっこは楽しい?」
「……。」
「つい数時間前まであんな大口を叩いてたのに。バカな子。」
「……。」
「つらいでしょう?苦しいでしょう?だけどそれがあんたの選んだ道。」
「……。」
「引き返すなら、今よ。」
「……っ」
「後戻りできなくなる前に、考え直すことね。」
礼子は何もかもを見透かしたようにそう言った。
「あんたには無理よ。だってあんたは誰よりも弱くて、脆いから。」
礼子は虚ろな目で呟いた。