嘘つきなポーカー 1【完】



だけど、自分の前で、自分のことを思って涙してくれている健気な華代を見ると、どうしても彼女を裏切ってはいけない、という思いに駆り立てられた。


「あのさ、華代…」

「由佳ちゃん!もう話さなくていいよ?由佳ちゃんも、話すのつらいでしょ?」


話そうとする由佳を遮って、華代は心配そうな顔をして由佳の顔を覗き込んだ。


「え…、あぁ、うん。ありがとう。」


由佳はどうしても一歩が踏み出せなかった。

目の前で涙で目を潤ませている華代は、これ以上傷付ければ壊れてしまいそうな気がして、今は言うべき時ではないと思った。



―― 木村が知ったら、どう思うだろうな。


―― 俺が止めなきゃ、キスしてただろ?



薫のあの時の言葉が一瞬頭によぎったが、「何もやましいことはない。」と自分に言い聞かせて、蓋をした。