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物心ついた時から、彼はいつも由佳の傍にいた。
いつ、どんな風に出会ったかなんて覚えていないぐらい、ずっと幼い頃から。
近所に住んでいて、母親同士が昔からの知り合いだった。
だからきっと、言葉も分からない時からずっと一緒だったんだろう。
由佳にとって恭平は、お兄ちゃんみたいな存在だった。
「由佳。」
優しい声が、優しい瞳が、差し伸べる頼りない細い腕が、恭平の全てが、由佳の唯一の心の支えだった。
毎日のように、由佳の隣には恭平がいた。
母親に愛されない由佳の心の隙間を、いつも恭平が埋めてくれた。
「由佳には僕がいるから。」
「うん…」
「由佳のママが由佳のことを好きじゃなくても、僕がいるから。」
「恭ちゃん…、私たちずっと一緒?」
「うん、僕が一生由佳を守るよ。」
幼い頃の約束を、由佳はずっと覚えている。

