嘘つきなポーカー 1【完】



薫の少し速い鼓動が聞こえた。


「あぁ、ムカつく。」


由佳を抱き締めながら、薫は呟いた。


「ちょ、っと…」


由佳は離れようとしたが、薫があまりに強く由佳を抱き締めていたので、抵抗することができなかった。


「あいつは笠原の何?」

「……。」

「今は俺のほうが一緒に居んじゃん。」

「……。」

「ただの幼馴染みだろ?気にすんなよ。」

「別に気になんか…」


すると薫は由佳を抱き締めていた腕を離し、由佳の目を見つめながら言った。


「お前、あいつのことになるといつも見てられないような顔する。」

「………っ。」


由佳は目をそらして俯いた。


「分かるんだよ。お前があいつのこと考えてる時はいつも。」

「……。」

「あいつのことを考えてるお前の瞳には、いつも色が灯る。」

「……っ。」

「あいつはお前の何を握ってんの?」


由佳は俯いたまま何も言わなかった。