薫の少し速い鼓動が聞こえた。
「あぁ、ムカつく。」
由佳を抱き締めながら、薫は呟いた。
「ちょ、っと…」
由佳は離れようとしたが、薫があまりに強く由佳を抱き締めていたので、抵抗することができなかった。
「あいつは笠原の何?」
「……。」
「今は俺のほうが一緒に居んじゃん。」
「……。」
「ただの幼馴染みだろ?気にすんなよ。」
「別に気になんか…」
すると薫は由佳を抱き締めていた腕を離し、由佳の目を見つめながら言った。
「お前、あいつのことになるといつも見てられないような顔する。」
「………っ。」
由佳は目をそらして俯いた。
「分かるんだよ。お前があいつのこと考えてる時はいつも。」
「……。」
「あいつのことを考えてるお前の瞳には、いつも色が灯る。」
「……っ。」
「あいつはお前の何を握ってんの?」
由佳は俯いたまま何も言わなかった。

