「木村が知ったらどう思うかな。」
「……。」
「俺が止めなければキスしてただろ?」
「……っ。」
「邪魔が入ってガッカリした?」
「違う…」
「あいつとキスしたかったんだろ?」
「違う!」
由佳は叫んだ。
また1粒、涙がぽろりと零れた。
「そんなんじゃ、ないから……」
「………」
「だから…もう何も言わないで…」
薫は寂しそうな顔をしながら由佳の泣き顔を見つめた。
「んで…」
「…?」
「なんであいつのことでは泣くんだよ…」
「……。」
「いつも意地張って絶対弱いとこなんて見せねぇくせに、なんでいつもあの金髪野郎のことになると、そんな悲しそうな顔をするんだよ。」
「……。」
「そんなにあいつが好きなのかよ…」
「ちが…」
その瞬間、由佳の視界が真っ暗になった。
カラン、と音を立てて松葉杖が床に倒れた。
一瞬、何が起きているのか分からなかった。
ふわりと甘い匂いが由佳を包んだ。

